当院の特徴

主要ながんの特徴

日本で罹患、死亡が多い胃がん、大腸(結腸・直腸)がん、肝がん、肺がん、乳がんに加えて、当院で治療数の多い前立腺がん、子宮(頚部・体部)がん、血液腫瘍の解説です。説明で用いた数値は、国立がん研究センターが公開する2019年の統計をもとに作成しています。

50代後半から増加傾向

胃がんは、まず胃を覆う壁(胃壁)の内側にある粘膜に発生します。この段階のものは早期がんと言い、この時期に見つけて治療すればほとんど治ります。しかし、がんが粘膜を超えて胃壁の外側にまで進行すると、周囲のリンパ節や腹膜、肺や肝臓に転移し、治りにくくなります。
治療は、早期がんであれば、内視鏡を使って腫瘍を切除する治療が中心です。がんが胃壁の奥まで達しているときは、胃を切除する外科的治療を検討します。手術後は必要に応じて薬物療法が行われることがあります。
胃がんに罹る人は年間約12.4万人であり、50代後半から増加傾向にあります。死亡数は肺がん、大腸がんに次ぎ第3位であり、死亡率の高いがんであると言えます。

ポリープも要注意

大腸がんは大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腸の粘膜から発生するものとポリープと呼ばれる突起物ががん化するものがあります。がんが大腸の壁の外へ出て、おなかの中で散らばることを腹膜播種と言い、腹膜播種を起こすと治りにくくなります。
治療は、胃と同様に、腸の粘膜にとどまるものは内視鏡で切除を行います。がんが進行しているときは腸を切除する外科的治療を行い、必要に応じて薬物療法が行われます。
大腸がんに罹る人は年間約15.6万人であり、30年前の約1.5倍に増えています。これは食生活の欧米化によるものと考えられます。

自覚症状が少ない沈黙の臓器

肝がんは、肝臓から発生した原発性肝がんと他臓器のがんが転移した転移性肝がんに分けられます。原発性肝がんは、肝炎ウイルスへの感染やアルコールが原因で肝細胞へ慢性的な炎症を繰り返して発症することが多いと言われています。また最近では、脂肪肝から発症するケースも増えています。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期症状がほとんどないため、肺や骨に転移して発覚する場合もあります。
治療は、がんが肝臓内にとどまっている場合は、切除可能であれば手術を行うことが多いですが、最近は超音波下で観察しながらがんに針を刺してラジオ波電流を流す治療法も増えています。このような治療の対象でない人は、肝臓内の動脈に抗がん剤や塞栓剤を注入して血管を塞ぐ治療法を行います。
肝がんに罹る人は年間約3.7万人であり、女性に比べて男性が約2倍多く見られます。

早期治療なら高い生存率

肺がんは、鼻(口)から入った空気を左右の肺に取り入れる気管支と、酸素と二酸化炭素の交換をする肺胞に発生するがんです。また、がんが進行すると肺内の豊富な血液にのって、骨や脳に転移することもあります。
治療は、組織型と言われるがんのタイプによって異なりますが、早期肺がんであれば外科的治療、進行肺がんであれば薬物療法、放射線治療が中心です。
肺がんに罹る人は年間約12.7万人であり、死亡数は約20年連続第1位です。しかし、がんが拡がる前に治療すれば、5年生存率は83.5%であるため、早期発見、早期治療が重要です。

女性のがん罹患数第1位

乳がんは、乳房内の乳腺組織から発生します。乳がんの発症は、生活・食生活習慣や持病や遺伝が関係していますが、原因不明の場合も多数あります。女性が罹患するがんですが、稀に男性も罹患します。検診によって、早期発見が可能ながんです。治療方針は、進行度(ステージ)とがんの性質(サブタイプ・多遺伝子アッセイ・遺伝性乳癌卵巣癌の検索)によって決まります。
治療は、手術療法、薬物療法、放射線療法を組み合わせて行います。術後の薬物療法の期間は10年に及ぶ場合もあるので、生活・仕事との両立が大切です。
乳がんに罹る人は年間約9.8万人と増加傾向であり、女性のがん罹患数第1位です。20歳代から100歳代まで、幅広い年齢層で発症しますが、30歳代後半から増加し、ピークは40歳代後半と70歳代前半です。

男性のがん罹患数第1位

前立腺がんは、男性特有の臓器である前立腺の細胞が異常に増殖することで発生するとも言われています。比較的進行が緩やかながんであり、生前は自覚症状がなく、自分ががんだと知らずに過ごされていた方が、死後の解剖ではじめて発覚するケースもあります。
治療は、外科的治療、放射線治療のほかに、前立腺内にがんがとどまっていれば、定期的なPSA値の測定のみを観察する監視療法もあります。
前立腺がんに罹る人は年間約9.5万人であり、男性のがん罹患数第1位です。近年は増加傾向にあり、食文化の変化や高齢化に伴う患者数の増加が一因と考えられます。

子宮体がんは罹患数が30年前の約4倍

子宮がんは、女性特有のがんであり、がんができる場所により、子宮体がんと子宮頸がんに分かれます。体がんは子宮の内側を覆う内膜から発生する内膜がんがほとんどですが、稀に筋肉層から発生する子宮肉腫もあります。頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となり、異形成と呼ばれるがんになる前の状態を経てからがんになります。
治療は、外科的治療、放射線治療、薬物療法があり、体がんは手術により、子宮と両側付属器(卵巣・卵管)を取り除くことが基本です。
体がんに罹る人は年間約1.8万人であり、頸がんに罹る人は年間約1万人です。体がんは30年前の約4倍に増えています。

治療薬の拡がりにより、生存率が大幅に上昇

血液腫瘍は、血液細胞の産生過程(造血器)やリンパ組織に由来するがんです。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などがあります。以前はなかなか治りにくいがんであると言われていましたが、遺伝子検査などの発展により、治療薬の幅は大きく拡がっています。
治療は薬物療法が中心ですが、疾患の状況によっては造血幹細胞移植も選択肢となります。
白血病に罹る人は年間約1.4万人、悪性リンパ腫に罹る人は年間約3.7万人、多発性骨髄腫に罹る人は年間約0.7万人です。最近は分子標的薬や抗体薬などの登場により、5年生存率が大幅に上昇しています。