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輸血・細胞治療センター

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スタッフ

センター長 杉浦 勇(副院長、血液・腫瘍内科第一部長、診療記録管理室、臨床研究管理室、初期臨床研修センター長兼任)
(輸血認定医)
副センター長 倉橋信悟(血液・腫瘍内科副部長兼任)
輸血・細胞治療センター技師 専任技師5名

輸血・細胞治療センターとは

輸血・細胞治療センターは、適切な血液製剤を必要とする臨床現場へ迅速に支給するとともに、輸血療法が適正に実施される体制を作成・推進する部門です。

  1. 輸血療法委員会の主催
  2. 血液製剤の適正使用の指導、情報提供
  3. 血液型判定や輸血交差試験のような輸血に必要な検査の実施
  4. 輸血製剤の日赤からの入庫、外来・病棟・手術室への出庫
  5. 副作用情報の把握
  6. 自己血の中央採血
  7. 研修医、検査技師への教育
  8. 血液幹細胞処理の支援

特色

公立病院では全国でトップクラスの規模を誇る当院で行われる輸血業務を担当します。
1年間に扱う血液製剤は、赤血球製剤約8,800単位、血小板製剤約20,000単位、新鮮凍結血漿約3,500単位に達しており、24時間臨床現場からの請求に対応しています。
待機手術に備えて自己血採血を慣れたスタッフで中央採血することに積極的に取り組んでいます。
また、輸血は生きている血液を輸注することから臓器移植とも言われるようになっており、造血幹細胞移植の支援にも努めています。

その他

輸血に関する検査

血液型
赤血球

血液型は赤血球の表面にある物質で決まります。皆さんがご存じのABO式血液型は赤血球表面にA抗原のみ(A型)、B抗原のみ(B型)、両方ある(AB型)か、いずれもない(O型)ことになります。Rh式はD抗原がある(+)か、ない(-)ことになります。

血漿

血液型については、この赤血球膜上の抗原だけでなく、赤血球が浮かんでいる周囲の体液(血漿)中にある抗体も関係します。A型、B型には生後半年ほどで各々抗B抗体、抗A抗体が出現します。O型には抗A抗体と抗B抗体の両方が出現しますが、AB型には何れも出現しません。これらは自然抗体と呼ばれ自然と規則的に出現します。なお、D抗原に対する抗体はD抗原を持たない人がD抗原を持つ赤血球に接しない限り出現しません。

血液判定をする際には、赤血球膜上の抗原の型と、血漿中の抗体の種類の両方を調べて規則どおりであることを確認します。まえに説明しましたように生まれてすぐは血漿中に自分の血液型に相当する抗体がまだできていないので正確な血液型を判定することはできません。
ごくまれに現在使用している試薬ではこの赤血球膜上の抗原と血漿中の抗体の関係を確認できない家系の人がみえます。

ABO式血液型判定
オモテ試験 赤血球膜上の型抗原の判定 赤血球
ウラ試験 血漿(血清)中の抗体の判定 血漿
たとえば、 オモテ試験 A抗原 ⇒ A型
ウラ試験 抗B抗体
交差試験

交差試験は患者さんの血液と輸血する血液が反応しないことを確認する検査です。
一般的には血液型の異なる製剤を輸血することを防ぐために最終確認として行います。ある患者さんの血液型判定を行ったつもりが、検査する血液自体を取り違えている場合には、ここで防ぐことができます。現在のシステムではこれは非常にまれなことになっており、通常は患者さんの血漿中に不規則抗体がないことを確認することが主な目的となっています。
下の図Aの場合には交差試験は必要ありませんが、図Bの場合には交差試験を行って血液製剤の赤血球膜上の特殊な抗原に対する不規則抗体がないことを確認する必要があります。

図A 血液型が確定していて不規則抗体がない場合

血漿

図B 血液型が確定しているが不規則抗体がある場合

血漿

輸血療法の説明

輸血療法とは

輸血療法は様々な理由で不足した血液成分を補う治療法です。輸血される血液製剤は一定の基準を満たした健康な人からの献血を材料に製造されています。そのために、供給は充分とは言えません。またヒト由来の生物製剤であるために最善の技術を持ってしても病原微生物の混入を完全に無くすことは出来ません。さらにアレルギー性の副作用を防ぐことも出来ません。このような理由から、輸血療法の適応は血液成分の不足をそのままにしておけば病状の悪化を来たす場合があり、かつ補充する量はそれを回避するために必要最低限の量に止めなければなりません。輸血療法を受ける際には、こうした望ましくない作用が起き得ることを考慮しても輸血療法が必要な状態であることを理解していただくことが必須です。

血液と成分輸血

ヒトは、体重1kgあたり約70~80mlの血液を持っています。血液は、血漿と呼ばれる淡黄色の液体に、赤血球、白血球、血小板の3種類の細胞が浮かんでおり、赤血球に含まれる血色素のため赤く見えます。血漿中には、凝固因子、アルブミン、免疫グロブリンなどが含まれています。

成分輸血

血液に抗凝固剤を加えて遠心分離すると、細胞成分が下層に、液体成分が上層に分離されます。赤血球は比重が大きいためにもっとも下層に分離され、その上に白血球と血小板の薄い層ができます。
輸血にあたっては血液全部を輸血するのではなく、赤血球・血小板・血漿などのうち不足している成分を必要最低限輸血「成分輸血」します。予定手術のように時間的に余裕のある場合には、他人の血液を使用しないで自分の血液を貯血して、必要になった場合にはそれを輸血する「自己血輸血」もあります。

輸血の適応

患者さんは、外傷・消化管出血などの出血、造血器の異常、手術・抗がん剤の副作用などの治療に伴って血液あるいはその一部が不足することが有ります。そのままでは輸血をしないと酸素不足による重要臓器(脳・肝臓・心臓・腎臓など)の障害を起こしたり、出血が止まらずに生命が危険な状態になることが有ります。このような場合には不足している血液成分を輸血することで危険を回避する必要があります。

宗教上の輸血拒否に対する対応

当院は宗教上の輸血拒否に対して以下のような基本姿勢で対応いたします。この方針は輸血療法委員会での議論のうえで院内倫理委員会、院長の承認を受けたものです。(2011年9月20日)

豊橋市民病院における宗教上の輸血拒否に対する基本方針

  1. 患者さまの宗教的信念は「個人の権利」として尊重します。
  2. 患者さまの意志が客観的に証明される場合は、その意志を尊重し、宗教的輸血拒否に関する合同委員会の「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」(2008年2月28日)に基づいたチャートに従い、診療を行います。
  3. 輸血拒否という患者さまの意志決定の権利を認めた場合でも、医療機関に課せられた救命の使命と裁量権を完全に放棄することはできません。患者さまの意志を最大限尊重しますが、患者さまの救命が必須で輸血が唯一の手段である場合や無輸血の結果が第三者に社会的影響を及ぼす場合は、医療機関の責務として成分輸血を行う場合があります。
  4. 当院は患者さまの意志を尊重し最善をもって可能な限り無輸血で医療を提供する決意ではあります。しかし、患者さまが極めて低い可能性であっても輸血を認め難い場合は、絶対的無輸血を認める他の医療施設での診療をお勧めします。
輸血に伴う副作用

血液製剤はヒト由来の生物製剤であるために免疫学的副作用と感染症の伝播を完全に防ぐことは出来ません。

1.免疫学的副作用のリスク

非溶血性副作用の頻度は輸血回数あたり2%前後発生し、製剤別では 赤血球濃厚液 0.8%、血小板濃厚液5.1%、新鮮凍結血漿1.3%の割合で発生しています。症状としては蕁麻疹・発熱が多く見られます。赤血球濃厚液では発熱、血小板濃厚液・新鮮凍結血漿では蕁麻疹の発生が多い傾向があります。溶血性副作用の発生頻度は、非溶血性副作用の頻度の約50分の1程度発生しています。頻度は稀ですが、致死的副作用が有り得ます。一つは発症すれば致命的な輸血後GVHDという副作用ですが、これについては血液製剤へ放射線照射を行うことでほぼ完全に予防することが出来ます。もう一つは輸血患者に約0.16%で起き得る輸血関連急性肺障害「TRALI」です。これは、輸血後多くは2時間以内に発症する呼吸困難と低酸素血症を主徴とする急性肺浮腫で、適切に対応しても10%程度の死亡率があります。

2.感染症のリスク

●ウインドウ期間
献血者がウィルスに感染しても体内である程度増殖しないと最新の医学検査法をもってしても検出できない期間が有り、この期間をウィンドウ期間と呼びます。現在のウィンドウ期間はHIVで11日、HBVで34日、HCVで23日です。したがってウィンドウ期間中に献血が行なわれると、その血液に感染の危険があっても排除する事が不可能になります。

●感染の頻度
2005年公表された日本赤十字社輸血情報の中で、2002年2月~2004年1月の4年間の集計によると、日本赤十字社から供給される輸血用血液製剤のHBV、HCV、HIVの伝播の確率は次の様に推定されます。これは輸血による感染が科学的に証明された件数であり、実際にはこれより多いと推定されます。

輸血に伴う感染症の感染リスク
HBV(B型肝炎) 13-17名/1年
HCV(C型肝炎) 感染症例が少なく、リスク推定困難
(2000年~2005年の間に1例)
HIV(エイズ) 感染症例が少なく、リスク推定困難
(日本赤十字社輸血情報0506-89より)
その他、採血時の細菌混入、未知の病原微生物などの混入の可能性もあります。
輸血の方法

安全のため血液型を院内で2回確認します。この血液型の血液製剤を準備(日赤への発注、交差適合試験の実施など)し、医師の判断で必要時に応じて輸血センターより出庫され、適切な製剤であるか複数回の確認を行います。最後に、輸血直前に患者さんの確認、輸血製剤の確認をコンピュータで行います。輸血開始直後の観察には特に注意し、輸血開始から輸血後までの間の副作用発生の有無を輸血センターへ報告します。また、2ヵ月毎に開催される輸血療法委員会にてこれらシステムに問題がないかを検討します。

輸血前後の感染症検査の実施と余剰検体の保存

すでに説明させていただいたように、非常にまれではありますが輸血に伴う病原性ウィルスの感染を完全に防ぐことは出来ません。このような場合に備えて、HBV、HCV、HIVについては輸血前に感染症検査を行ない、患者さんに感染がないことを確認し、さらに輸血後およそ3ヵ月後をめどに再度検査を行うことにより、輸血による感染が起きていないか確認することを原則にしています。また、検査後の余剰検体を出来るだけ確保して2年間を目標に凍結保存するシステムを開始しています。このようにして保存された検体は遡及以外の目的で公的に利用される事は有りません。また輸血履歴は20年間保存され、同様の目的で利用されることがあります。輸血による感染が証明できる場合には公的な感染症給付制度の適用を申請することが出来ます。

おわりに

輸血には以上のように様々な問題がありますが、それらを上回る効果が期待でき、患者さんの状態を安定化するために輸血の適応があることを理解したうえで輸血に同意できる場合には署名をお願いいたします。なお、不明な点については担当医師に遠慮なくご質問ください。