1. TOP
  2. 部門紹介
  3. 脳神経外科
  4. 脳神経外科「主な対象疾患の説明」1

脳神経外科「主な対象疾患の説明」1

このページを印刷する

神経膠腫

原因

神経細胞を栄養する神経膠細胞(グリア細胞)より発生します。良性から悪性まで多種類の腫瘍があります。腫瘍遺伝子の増幅や腫瘍抑制遺伝子の脱落により発生します。遺伝子異常が生じる原因は不明です。

神経膠腫

症状

意識障害、知能障害、麻痺、言語障害等、多様な神経症状を出します。徐々にびまん性に脳実質を浸潤するので、けいれんを起こすことも多く見られます。

治療方針

初発の場合は手術をまず考慮します。病理標本により腫瘍の種類、良性悪性等の性状を診断します。悪性腫瘍の場合には主として、放射線照射、抗癌剤(テモゾロマイド)の内服や注射、血管内皮細胞増殖因子の働きを抑える抗癌剤(ベバシズマブ)の注射等を行います。これらの治療法は下図のように有効である場合もありますが、必ずしも十分に有効であるとは限りません。

神経膠腫

手術方法

摘出は全身麻酔により開頭術で行います。神経症状を生じにくい部位の腫瘍は全摘出も考えますが、神経症状を生じ易い部位の腫瘍は、神経の機能をモニターしながら神経症状を増悪させない範囲で腫瘍を摘出します。その際手術用ナビゲーションを使用し、安全な範囲でできるだけ多くの腫瘍を摘出します。

術後経過

治療成績は腫瘍の性質に大きく左右されます。悪性度が高い程予後は悪くなります。

※許可を得て引用:
 日本脳神経外科学会ホームページより脳外科疾患情報ページの図譜

髄膜腫

原因

脳の周囲の脳脊髄液を包むクモ膜から発生します。髄膜腫の大半は良性腫瘍ですが、悪性腫瘍もあります。第22番の遺伝子の欠失や腫瘍抑制遺伝子(NF2)の異常によってできることも多いのですが、遺伝子異常が見出されないこともあります。

症状

発生する部位は様々であり、それに応じて出現する症状も様々ですが、主に頭痛、脳神経麻痺、運動麻痺、けいれん、軽度の意識障害、視力視野障害、言語障害等で発症します。ゆっくりと増大するためかなりの大きさになるまで神経症状を出しにくく、注意が必要です。

髄膜腫

治療方針

小さい腫瘍は様子を見ることも多いのですが、ある一定以上の大きさに達した場合は摘出術を行います。

手術方法

正常脳を損傷しないように腫瘍を摘出し、腫瘍の発生母地である、くも膜及び硬膜を切除します。正常脳や脳血管に腫瘍が食い込んでいる場合は、その部分の腫瘍は残存させます。

術後経過

無理をしない限りは手術成績は良好です。しかしながら残存腫瘍が多い場合は再発も早くなりますので、できるだけ多くの腫瘍を摘出することは重要です。

※許可を得て引用:
 日本脳神経外科学会ホームページより脳外科疾患情報ページの図譜

脳下垂体腫瘍

原因

ホルモンを産生し、血液中に送り出す脳下垂体という組織から発生します。

脳下垂体腫瘍イメージ1

脳下垂体腫瘍イメージ2

ほとんどが良性腫瘍です。一部の腫瘍で腫瘍遺伝子の異常(Pit-1,GSalpha,MEN1等)が関与していますが、遺伝子異常が生じる原因は不明です。ホルモンを産生しない腫瘍(非機能性腺腫)が一番多いのですが、乳汁分泌ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン等、各種ホルモンを産生する腫瘍(機能性腺腫)があります。

脳下垂体腫瘍イメージ3

症状

非機能性腺腫

まずは無月経、性欲低下等の下垂体機能不全による症状が生じます。その後ある程度の大きさまで増大し視神経の圧迫が起こると、視野(見える範囲)の狭窄や視力低下等の症状が生じてきます。

非機能性腺腫イメージ1
非機能性腺腫イメージ2

機能性腺腫

乳汁分泌ホルモンを産生する腫瘍では乳汁分泌過多、無月経が生じます。

乳汁分泌イメージ

成長ホルモンを産生する腫瘍では、先端巨大症、巨人症等の症状が出現します。

先端巨大症イメージ

先端巨人症レントゲン撮影所見

巨人症イメージ

副腎皮質刺激ホルモンを産生する腫瘍では、異常な肥満、多毛等のクッシング病が出現します。

クッシング病イメージ

甲状腺刺激ホルモンを産生する腫瘍では、甲状腺機能が亢進します。

治療方針

MRIやCTにより画像診断をした後、採血によるホルモンの検査を行います。

非機能性腺腫

ホルモンを産生しない腫瘍で視力視野障害が出現した場合は、手術による摘出が必要です。

機能性腺腫

乳汁分泌ホルモンを産生する腫瘍の場合、ドーパミン(乳汁分泌ホルモン分泌抑制物質)作動性のカベルゴリンというお薬の内服で治療することも多いのですが、効果が不十分な場合には手術により摘出することもあります。
成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン等を産生する腫瘍の場合、これらのホルモンの過剰産生は体に非常に有害ですので、手術によりその全てを摘出することを考えます。
成長ホルモンを産生する腫瘍が再発した場合は、ソマトスタチン(成長ホルモン分泌抑制物質)様に作用するオクトレオチドという注射薬で治療することも可能です。

手術方法

手術は全身麻酔により行います。鼻の穴より神経内視鏡という手術器械を挿入し、摘出します。

手術器具

手術所見及びシェーマ

手術方法イメージ

術後経過

大きな腫瘍でなければ、全摘出は十分に可能です。一時的に尿量が増加した場合は、抗利尿ホルモンの使用にて治療して参ります。副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンの内服は術後継続して必要になることが多くあります。
また、成人成長ホルモン分泌不全症となり、成長ホルモンの皮下注射が必要な場合もあります。

成人成長ホルモン分泌不全症(PDF/7.85MB)
(サイズが大きいため開くまでに時間がかかります。)

※許可を得て引用:
 日本脳神経外科学会ホームページより、脳外科疾患情報ページの図譜

聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)

原因

体のバランスをとる前庭神経からできる腫瘍です。腫瘍抑制遺伝子(NF2)の異常によってできることも多いのですが、遺伝子異常が見い出されないこともあります。腫瘍のほとんどが良性腫瘍です。

聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)

症状

聴力障害(耳鳴)で発症することが多いのですが、不安定感や顔面の感覚異常も生じ得ます。

治療方針

神経症状が無い小さな腫瘍の場合は、経過観察とすることも多くあります。神経症状がある大きい腫瘍の場合は、治療も考慮します。治療には
(1)手術による摘出と、
(2)ガンマナイフという機械による、局所的な放射線照射の方法があります。

手術方法、治療経過

(1)手術は全身麻酔により行います。耳の後方を切開し、小脳と頭蓋骨の間より腫瘍に到達します。近くを走る顔面神経の機能をモニターしながら、腫瘍を全摘出するようにします。
小さな腫瘍の場合は聴力を温存することも可能ですが、ある程度の大きさの腫瘍では聴力を犠牲にしても全摘出することを考えます。

(2)ガンマナイフの照射にて腫瘍を完全に消すことはできませんが、腫瘍の増大が制御し易くなります。

※許可を得て引用:
 日本脳神経外科学会ホームページより脳外科疾患情報ページの図譜

中枢神経系原発悪性リンパ腫

原因

免疫を司る、リンパ細胞(特にBリンパ細胞)由来の腫瘍です。比較的高年齢の方に発生しやすく、最近増加している腫瘍です。発生原因ははっきりとは分かっていません。

中枢神経系原発悪性リンパ腫

症状

頭痛、無欲、傾眠、記憶障害、感覚及び運動障害等の症状を呈します。

治療方針、手術方法

可溶性IL-2レセプターという腫瘍マーカーの増加にてある程度診断が可能です。通常は全身麻酔下の開頭手術により腫瘍を部分的に切除し、得られた病理標本により診断を確定します。悪性リンパ腫と診断されたら、化学療法、放射線照射により治療します。

治療経過

悪性腫瘍ですので、5年生存率が22-43%の厳しい経過となります。

※許可を得て引用:
 日本脳神経外科学会ホームページより脳外科疾患情報ページの図譜

転移性脳腫瘍

原因

体の他の部位にできた悪性腫瘍が、血行性または直接浸潤の経路で、頭蓋内に進展してできる腫瘍です。肺癌、乳癌からの転移が多く見られます。

中枢神経系原発悪性リンパ腫

症状

転位した腫瘍の場所により、麻痺、言語障害等、様々な症状が出現します。脳の周囲の脳脊髄液に転位して、髄膜癌腫症となることもあり、その場合は意識障害も生じてきます。

治療方針、手術方法、治療経過

放射線療法

(1)少数の小さな腫瘍が転位している時は、ガンマナイフという機械による、局所的な放射線照射を行います。

中枢神経系原発悪性リンパ腫

(2)多数の腫瘍がび漫性に転位している時は、脳全体に放射線照射を行います。
(3)1-2ヶの大きな腫瘍が転位している時は、手術による摘出も考慮致します。手術は全身麻酔により行います。開頭を行った後、腫瘍を全摘出することを狙います。再発を抑える目的で、術後に腫瘍のあった部位に放射線照射を行うこともあり得ます。元の腫瘍がきちんと制御されていれば、術後経過は良好です。

化学療法

原発の腫瘍に応じ、化学療法を行うことも考えます。化学療法に対する感受性の高い小細胞癌と乳癌では特に、考慮致します。
髄膜癌腫症では、抗癌剤の髄腔内投与による化学療法も考慮致します。

※許可を得て引用:
 日本脳神経外科学会ホームページより脳外科疾患情報ページの図譜