診療科・部門

女性内視鏡外科

診療科のご案内

・産婦人科における低侵襲手術(腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術)を専門に行う診療科です。
・患者さんの身体に優しく、早期社会復帰可能な手術を行うことを心がけております。
・子宮筋腫や子宮頸部異形成、子宮脱などの良性疾患だけでなく、子宮体がんや子宮頸がんなどの悪性疾患に対しても積極的に低侵襲手術を取り入れています。
・婦人科がんの専門医と内視鏡手術のエキスパート(技術認定医)の両方の資格を持っており、従来は開腹術でしかできなかった、広汎子宮全摘術や傍大動脈リンパ節郭清術などの難しい手術も低侵襲下手術で行うことが可能です。
・多くの腹腔鏡下手術を行っており、ロボット支援下手術は年間200件以上行っています。
・ロボット支援下手術の指定研修施設に認定されており、全国から多くの医師が見学に訪れます。
・婦人科がんの治療では、手術療法だけなく、放射線療法や化学療法、分子標的薬療法、遺伝子検査などを行い、新しく効果的な治療法を取り入れています。

外来担当医表

基本的には月曜日、金曜日の午前中に担当しております。腹腔鏡下手術やロボット支援下手術をご希望の方はご相談ください。

第1診察室午前梅村梅村
午後

代表的な疾患・治療

産婦人科領域の良性から悪性疾患まですべての分野が治療対象です。内服薬による治療や手術療法、化学療法、放射線療法、分子標的薬治療などすべての治療を行うことが可能です。子宮筋腫や子宮内膜症などの良性疾患に対しては、内服薬による治療を行います。改善しない場合には手術による治療を行います。通常、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術による治療を行います。
骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)の治療は、ペッサリーによる保存的治療やロボット支援下手術や経腟手術にて治療を行います。早期子宮頸がんや子宮体がんに対しては、基本的には腹腔鏡下手術やロボット支援下手術で治療を行います。病状が進行している場合には開腹術による治療を行い、術後放射線治療や化学療法など治療を追加します。卵巣がんに対しては、基本的には開腹術による手術を行い、術後必要に応じて化学療法を追加します。進行卵巣がんや腹膜がんの場合には、腹腔鏡下手術や開腹術で腹腔内の病状観察や生検を行った後、化学療法による治療を行う場合もあります。その他、稀ながん種に対しても治療が可能です。

  • 子宮筋腫は月経過多による貧血症状や、筋腫の圧迫による下腹部痛症状が出現します。
  • 筋腫のできる部位や大きさによって治療法が異なります。
  • ホルモン療法や貧血治療を行う内服薬で効果が乏しい場合には、手術を行います。
  • 筋腫がかなり大きい場合(臍部より上まである場合など)は開腹術により治療を行います。
  • それ以下の大きさの場合には腹腔鏡下手術やロボット支援下手術にて治療を行います。
  • 手術方法としては筋腫のみを切除する方法と子宮全摘術による方法があります。

  • 子宮内膜症は子宮内膜に類似した組織が子宮外で増殖する疾患で、慢性骨盤痛や排便時痛、性交痛などの症状を生じることがあります。
  • 無症状でも卵巣内にチョコレート嚢胞所見を認めることもあり、骨盤内の癒着を生じ不妊症の原因の一つとなります。
  • 治療法は内服薬による治療、ホルモン治療があります。
  • ホルモン剤による治療が奏功しない場合や卵巣チョコレート嚢胞が5㎝以上の場合には手術療法が必要となります。
  • 手術は通常腹腔鏡下手術に手行います。
  • 術後も再発防止のため、内服薬による治療継続が必要となることが多いです。

  • 骨盤臓器脱とは子宮脱や子宮下垂、膀胱や直腸、小腸が腟内を圧迫して下垂している状態です。
  • 腟内に専用のペッサリーリングを装着することで、子宮の位置を矯正し、子宮脱や子宮下垂の状態を改善できる場合もあります。
  • 子宮脱や下垂の状態が進行すると、リング矯正が困難となるため、手術療法により治療します。
  • 手術はロボット支援下手術による仙骨腟固定術(メッシュ使用)や腟式子宮全摘術と腟壁形成術を行います。
  • 骨盤底筋肉群が脆弱のため生じる疾患のため、手術で一旦改善しても場合により再発する場合もあります。

  • 子宮頸部異形成・上皮内がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)が主原因で、性交渉による持続感染が一因です。
  • HPVワクチンにより、感染を防御することが可能です。
  • 異形成や上皮内がんの状態になった場合には、円錐切除や子宮全摘術による手術が必要となります。
  • 円錐切除ではレーザーメスにより、患部を円錐状に切除します。
  • 子宮全摘術はロボット支援下手術や腹腔鏡下手術で行うことが可能です。
  • 年齢や病変の広さ、病状により適切な手術方法を選択します。

  • 子宮頸がん治療では手術療法が基本です。
  • 1A1期では円錐切除を行います。
  • 1A2期から1B1期までは通常腹腔鏡下手術による治療を行います。
  • 1B2期から2A期までは開腹術による治療を行います。
  • 2B期以降の進行期の場合には、放射線化学同時療法(放射線と化学療法を同時に併用する治療)を行います。
  • 進行期に合わせて治療方針を決定し、術後必要に応じて放射線や化学療法を追加します。
  • 最近では分子標的薬も保険適応となっており子宮頸がんの治療に使用されています。

  • 子宮体がんは40代~70代に生じ、不正性器出血を認める場合が多いです。
  • 治療法は基本的に手術療法が主体となります。
  • 1A期(早期)で見つかる場合も多く、現在ではロボット支援下手術により治療を行うことが多いです。
  • 1B期、2期では子宮、両側附属器、骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節を摘出する手術が必要となります。
  • 開腹術が保険適応ですが、2022年からはロボット支援下手術も保険適応となる可能性があります。
  • それ以降の進行期の場合でも手術療法や術後化学療法を追加して治療します。

  • 卵巣がんは卵巣の腫大や腹水貯留などによる腹部圧迫症状にて受診する場合が多く、時に検診などで卵巣の腫大を指摘されて受診される場合もあります。
  • 卵巣がんの治療は基本的には手術療法を行います。術前CT、MRI検査、腫瘍マーカー検査を行い卵巣がん疑いとして手術を行います。
  • 卵巣がんの場合には実際手術を行ってみて、手術中に迅速病理検査に提出して、良性、悪性、境界悪性腫瘍を判定することが多いです。
  • 悪性の場合には骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節郭清を追加します。術後に化学療法を追加することも多いです。

手術について

女性に優しい手術の代表として腹腔鏡下手術について説明したいと思います。
近年、医療機器と治療法の目覚ましい発展とともに拡がってきた手術方法です。以前では、臍部から恥骨まで10~15cmの切開にて手術が行われてきました。術後の強い痛みや腹腔内の癒着が生じたり、退院後もお腹を切っているために、日常生活を普通に過ごせるまで時間がかかりました。美容面においても傷が大きいことは女性にとってつらいことです。それに対し腹腔鏡下手術では、お臍にカメラを入れるための1cm程度の孔をあけるのと、手術器具を入れるための5mm~1cm程度の孔を下腹部に3箇所程度あけるだけで手術が可能となります。傷が小さい分だけ痛みも少なく、入院期間は6日程度で早期に社会復帰できるため、今後ますます腹腔鏡での手術が増えると考えております。
腹腔鏡下手術ではお臍から入れた専用の細長いカメラでお腹の中の状況をテレビモニターに映し出し、その画像を見ながら手術を行います。お腹の中に手術専用のガスをいれてお腹を膨らますことで、手術の視野を確保します。病気の部分はカメラで拡大視されるので、開腹術よりもはっきりと見えます。卵巣嚢腫の手術であれば、嚢腫部分を切除し、専用の袋で嚢腫を回収し、臍部から小さくして摘出します。子宮筋腫の場合は腹腔内で専用の器具をつかって細長くして体外へ回収します。また場合により腟部から回収することもあります。
ただし、注意点としては腹腔鏡下手術ではあまりにも大きな腫瘍や高度の癒着がある場合、出血量が多くなった場合には、開腹術に変更となることがあります。また開腹術でも同様ですが、術後に炎症などにより膀胱、尿管、腸、腟に異常が生じ、再手術が必要なこともあります。腹腔鏡特有の合併症として頻度は非常に低いですが、ガス塞栓症、皮下気腫、術後、首や肩の痛み(数日間)が生じることがあります。
一番大切なことは安心して安全な治療を受けられるようにすることです。そして元気に退院し、早期の社会復帰、家庭復帰へのお手伝いができましたら非常に嬉しいと思います。患者さまをはじめ、ご家族やいろいろな皆様に役立つことができれば幸いです。

2018年4月から子宮頸癌に対する腹腔鏡下手術が保険適応となりました。保険適応ですが、病院の施設条件や手術件数による制限があり、腹腔鏡下手術と癌治療ができる専門の医師がいないと本手術を行うことができません。当院は全ての条件を満たしているために本手術を保険診療で行うことができる施設として認定されております。また、同時に子宮体癌1A期と子宮良性疾患に対するロボット支援下手術も保険適応となりました。ロボット支援下手術は手術における手振れ防止機能や3Dによる立体視や、自由度の高い鉗子操作が可能な最先端の手術方法で、米国では婦人科手術の約80%がロボット支援下手術で行われており、日本でも今後増加していくと考えられます。2017年には子宮体癌1A期(特殊組織型)と1B期、2期に対する腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術が先進医療となり、当院も先進医療施設として認定されました。非常に高度な技術が必要で全国でも限られた施設のみ行うことができる手術方法です。本方法の導入により、大きな傷から小さな傷で手術を行うことができるため、痛みの軽減や入院日数の短縮、早期社会復帰につながる非常に有効な治療法です。

手術支援ロボットシステムは、患者さんへの低侵襲な手術を目的として、2013年7月に当院において東三河で初めて導入しました。
婦人科領域については、これまでにも腹腔鏡を利用した「子宮体がん根治手術」及び「子宮頸がん根治手術」を実施してきましたが、当院倫理委員会承認の元、自費診療ではありますが、2014年8月から子宮頸癌と子宮体癌に対して手術支援ロボットシステムによる「子宮悪性腫瘍手術」を実施してきました。ロボット支援下手術の有用性が認められたため、2018年4月からは子宮良性疾患や子宮体癌(1A期)に対するロボット支援下手術が保険適応となり、今後ますます増えていくと考えられます。
一般的な開腹手術に比べ、これまでの腹腔鏡と同様に非常に小さな傷(孔)で済むとともに、これまでの腹腔鏡の2次元映像に対し、手術支援ロボットシステムでは立体感のある3次元映像が得られます。手術操作では鉗子やカメラの手振れがなくなり、より緻密な手術が可能となり、さらに安全で出血量の少ない低侵襲な手術が可能となりますので、ご希望の方は一度ご相談ください。

現在実施中の臨床研究

豊橋市民病院女性内視鏡外科では、以下の臨床研究を実施しています。

更新日:2023年08月02日

管理番号
196
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
卵巣癌
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2015/01/22
終了予定日
2028/03/31

管理番号
198
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
子宮体癌
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2015/01/22
終了予定日
2028/03/31

管理番号
199
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
子宮頸癌
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2015/01/22
終了予定日
2028/03/31

管理番号
244
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
子宮頸癌
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2016/01/21
終了予定日
2028/03/31

管理番号
245
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
子宮悪性腫瘍
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2016/01/21
終了予定日
2028/03/31

管理番号
703
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
婦人科悪性腫瘍(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌)
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2022/10/05
終了予定日
2028/03/31

管理番号
757
院内代表者名
梅村康太
研究の対象
標準治療としてセンチネルリンパ節生検を実施する子宮頸癌、子宮体癌患者
(対象となる方からは直接同意を得ています。)
開始日
2023/08/02
終了予定日
2029/03/31

スタッフ

出身大学
札幌医科大学
指導医
  • 日本産科婦人科学会指導医
  • 日本婦人科腫瘍学会指導医
  • 臨床研修指導医
専門医
  • 日本産科婦人科学会産婦人科専門医
  • 日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医
  • 日本臨床細胞学会細胞診専門医
認定医
  • 日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医
  • 日本がん治療認定医機構認定医
  • 日本ロボット外科学会認定医(国内B級)
その他
  • 日本産科婦人科内視鏡学会評議員
  • 日本臨床細胞学会評議員
  • 東海産婦人科内視鏡研究会世話人
  • 豊橋市民病院緩和ケア研修会修了